探偵業法が定められた背景には依頼者との契約に関するトラブルの増加や違法な手段による調査をする探偵が多発した背景があります。
探偵会社・興信所の調査業務を運営責任者も含めて悪質業者が増加し、探偵業法が定められる以前には調査業を規制する法律がなかったので調査業務を行う探偵会社を規制する目的で法律の立法化の検討がされました。
平成18年6月に探偵業の業務の適正化に関する法律『探偵業法』が制定された後に平成19年6月に探偵業法が施行されました。
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探偵業法の目的について
探偵業法は探偵業者について必要な規制を定める事により、業務の適性化を図り、個人の権利や利益の保護に資する事を目的としています。
個人の権利を侵害する事や法律に反する調査を行った場合の罰則を設ける事で探偵業者がクリーンな調査業務を行う目的を持って設立されています。
探偵業務の定義について
探偵業務とは依頼者からの依頼を受けて特定人の所在又は行動についての情報を調査するものであり、依頼内容に係る情報を収集する目的として聞込み・尾行・張込み、その他これらに類する方法によって実地調査を行う事を指し、調査結果を依頼者に報告する業務までを指します。
探偵業務を行う営業を探偵業といいますが放送機関・新聞社・通信社、その他の報道機関の依頼を受けて取材をして報道目的で行われるものは除かれます。
探偵業とジャーナリストでは調査という形は変わりませんが、ジャーナリストの取材を調査と位置付ける事はない為、ジャーナリストが行う調査は探偵業務にはなりません。
探偵業務の欠格事由について
探偵業務を行う者は探偵業法で定められた欠格事由がある場合、探偵業を営む事は出来ません。
- 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
- 禁錮以上の刑に処せられ、又は探偵業法の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
- 最近5年間に営業停止命令・営業廃止命令に違反した者
- 暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が1から4及び6のいずれかに該当するもの
- 法人でその役員のうちに1から4までのいずれかに該当する者があるもの
上記欠格事由に該当する者は探偵業を営む上で必要な認可証を公安委員会から発行してもらう事は出来ません。
探偵業務を行う際は届出制の導入が課されています。
探偵業を営もうとする者は営業を開始しようとする前日までに営業所ごとに営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(所轄警察署経由)に営業の届出をしなければなりません。
欠格事由がある者が探偵業務を営む事が出来ない為に公安委員会に探偵業の届け出を行い、認可が下りれば探偵業を営む事が出来る様になります。
探偵業の認可が無い状態で探偵業を営む探偵会社も中には有りますが、探偵業の認可が無い状態で運営すれば探偵業の業務の適正化に関する法律施行規則に反する行為として罰則が設けられています。
探偵業務の実施の原則について
探偵業者は探偵業務を行うにあたり、他の法令で禁止・制限されている行為を行う事が出来る事となるものではありません。
法律に反する調査業務を行えば探偵業者といえども罰則の対象となり、禁止事項や制限行為が緩和された特別な存在という訳ではありません。
また、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害する事がない様にしなければならず、証拠撮影の為に無断で建物に入る等の住居侵入等が認められている訳ではありません。
交通違反の対象者を尾行する際に探偵だから交通違反をしても良いという法律はなく、法律を犯せば探偵も当然罰則があります。
契約時における探偵業者の義務について
探偵会社と依頼者の金銭トラブルが多発した事も探偵業法が定められた理由の一つになります。
探偵業務に係る契約の適正化を図る為、依頼者側の問題に関する義務と探偵業者側の問題に関する義務が定められています。
探偵社との契約トラブルが蔓延していた為に探偵業法で定められた書面の交付が求められます。
書面の交付を受ける義務について
探偵業者は、探偵業務を行う契約を締結しようとする時は、依頼者から調査結果を犯罪行為、違法な差別的取扱い、反社会勢力との契約を行わない等、その他違法な行為の為に用いない旨を示す書面の交付を依頼者から受けなければなりません。
重要事項の説明義務と7条の書類について
探偵業者との契約を締結する時は、予め契約の重要事項について書面を交付して説明しなければなりません。
契約書と重要事項説明の2つの他に犯罪行為を助長しない為のサインを求め、契約締結時は契約の内容を明らかにする書面を交付しなければなりません。
探偵業務の実施に関する規制について
探偵業者は調査結果が犯罪行為・違法な差別的取扱いといった違法な行為、その他違法行為の為に用いられる事を知った時は当該探偵業務を行ってはならず、犯罪行為に加担する様な調査を行えば規制の対象になります。
ストーカー行為に加担する違法な差別行為を行う等、犯罪行為を行うと知っていて加担する事は出来ません。
探偵業者は探偵業務を探偵業者以外の者に委託する事も出来ません。
秘密の保持について
探偵業者の業務に従事する者は業務上知り得た他人の情報を漏らしてはなりません。
探偵業者は探偵業務に関して作成・取得した資料の不正・正当な利用の防止措置をとらなければなりません。
探偵業者の従業者に対する教育について
探偵業者は従業者に対して探偵業務の適正な実施のために必要な教育を行わなければなりません。
名簿の備付け等について
探偵業者は営業所ごとに従業者名簿を備えて氏名・採用年月日・従事させる探偵業務の内容等を記載しなければなりません。
探偵業者は探偵業届出証明書を営業所の見やすい場所に掲示しなければなりません。
監督について
都道府県公安委員会は探偵業者に対し報告の徴収・立入検査・指示・営業停止命令・営業廃止命令等を行う事が出来ます。
探偵業法を分かり易く説明するとどんな法律?
探偵業法を分かり易く、簡単に説明すると金銭的なトラブル等が元で施行された探偵業法ですが、探偵だからといって違法調査を認める法律ではありません。
調査方法で認められる尾行・聞き込み・張り込みは探偵でなくても出来る技術になりますが、尾行、張り込み、聞き込みを探偵の認可がない状態で行えば探偵業法に反します。
個人情報を悪用する人物への加担等を未然に防ぎ、犯罪防止の面でも探偵業法があるからこそ探偵会社と依頼者のトラブル回避にも寄与しています。
探偵業法がなかった時代はルールがない状態で探偵は何でもやって良いかの振る舞っていた為、それに見かねた行政が重い腰を上げ、探偵業法というルールを作り、探偵会社を運営する為のルールを作った形になります。
まだ探偵業法を知らない方も大変多くいらっしゃいますが、無認可での運営は認められていない為、探偵会社に依頼する際は探偵会社の最寄りの公安委員会に問い合わせて最低でも認可の有無について確認していただく様にお願いしています。